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籾摺り機の種類と特徴、適切な選び方について解説

籾摺り機の種類と特徴、適切な選び方について解説
出典 : mits/ PIXTA(ピクスタ)

水稲栽培において、稲刈りが終わってから行う調整作業は、最終的に米の品質を左右する重要な作業です。一般的に、調整作業には「籾摺り」と「選別」があり、特に籾摺りは籾の殻を剥いて玄米にする工程で、適切に行ってくず米の発生を抑えることが大切です。

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籾摺りは、地域のライスセンターなどに持ち込んで行うことが一般的です。しかし、大規模栽培農家や、ほかの水稲農家との差別化を図り独自に販売する農家では、自前の籾摺り機を使うこともあります。本記事では、具体的な籾摺り方法や籾摺り機の種類について詳しく解説します。

籾摺りの特徴とは?

籾は籾摺りを経て玄米となる

interemit / PIXTA(ピクスタ)

水稲栽培の収穫作業では、稲刈りと脱穀を終えた籾を、品質低下を防ぐためにその日のうちに乾燥させます。「籾摺り」とは、乾燥させたあとに籾の殻を取り除いて玄米にする工程のことで、「脱ぷ」ともいいます。籾摺りは籾の乾燥後、1週間ほどで行います。

籾摺りを行う前には、以下のようなことに注意してください。

十分に乾燥させ、籾の適正水分である15%になっていることを確認する

十分に乾燥していないと、籾摺りの過程で割れてくず米になったり、玄米の表面に傷ができる「肌ずれ」が発生したりします。

乾燥を終えたときに水分15%になっていても、青米が多い場合は、籾摺りまで数日置いている間に、青米に含まれる水分がほかの玄米に移り、全体の水分割合が上がってしまいます。必ず、籾摺りの前に適正水分かどうかを確認しましょう。

異物は籾摺り前に取り除く

籾に異物が混入した状態で籾摺り機に投入すると、籾摺り機のスロワ羽が変形し、故障の原因となることがあります。事前に異物が混入していないかよく確認してください。

乾燥後2日ほど置いてから籾摺りをする

乾燥直後は籾が熱くなっており、玄米の表面が柔らかく肌ずれが発生しやすいので、直後の籾摺りは避けます。2日~1週間ほど置いて、十分に冷まします。

出典:JA佐渡「農業機械のご購入・修理・整備」所収「上手な収穫・乾燥・調整作業」

際の籾摺りのやり方については、のちほど詳しく解説します。共通して注意すべき点として、籾摺りの際に籾が混入すると等級が下がることもあるので、籾摺り作業中に混入しないように、玄米仕切り板を調整することが大切です。

なお、最初と最後に調整するものには籾が混入しやすいので、出荷分に混ぜず、保有米などにするとよいでしょう。

籾摺りが終わったら、割れたくず米などを選別し、品質のよい玄米のみ袋詰めします。このとき、割れたくず米はお菓子の原料や飼料などに使われます。

籾摺りの方法

籾摺りを含む収穫後の調整作業は、機械を導入すると高いコストがかかるため、各産地ではさまざまな方法で個々の農家の負担軽減が図られています。そこで以下では、水稲農家が籾摺り作業を外部の施設に委託する場合と、自分で行う場合の方法について解説します。

地域のカントリーエレベーターやライスセンターに持ちこむ

サイロがあるカントリーエレベーター

rara/ PIXTA(ピクスタ)

水稲の産地を中心に、日本の各地にカントリーエレベーター(CE)やライスセンター(RC)が設置されています。どちらも農家から籾を荷受けし、乾燥~籾摺り~選別~袋詰めまでを行うのが一般的です。主に市場出荷を対象にしており、そのまま出荷まで行う施設も多くあります。

この2つの施設の違いは、もともとは「サイロ」という貯蔵設備を持つものをカントリーエレベーター、持たないものをライスセンターと呼んでいました。

しかし、最近ではライスセンターも貯蔵設備を持つようになったため、今では規模の大きなものをカントリーエレベーター、比較的小規模なものをライスセンターと呼んでいます。

カントリーエレベーターやライスセンターはJAが持っている場合が多く、荷受けのスケジュールは利用者と相談しながら品種ごとに決めるケースが多く見られます。また、荷受け時期の混乱を避けるために、利用には事前の申し込みが必要です。

申し込みをしたら、決められた期間内に収穫し、収穫したその日のうちに籾を施設に持ち込みます。袋詰めまでを委託して自分で引き取る場合は、引き取る時期や方法についても確認しておきましょう。

なお、地域によって施設で受け入れる米の品種が決まっているので、事前に受け入れる品種や期間を確認し、収穫時期を合わせる必要があります。決められた品種以外を栽培したい場合や、収穫時期をずらしたい場合は、これらの施設を利用しない方法を考える必要があります。

ライスセンター

HAPPY SMILE / PIXTA(ピクスタ)

グループでミニライスセンターを持つ

独自の水稲栽培・経営を行う農事組合法人や非法人の任意組合などでは、多くの場合、法人や組織としてミニライスセンターを持っています。

また、小規模な経営農家が多い地域で、地域の中核となる農業法人がミニライスセンターを持ち、周辺の水稲農家から籾の乾燥・籾摺り・調整を受託するケースもあります。

米の自由販売が可能になって以降、各地域で直販率アップや高付加価値化を図る取り組みが増えており、米の品種や栽培方法、収穫時期などを独自に決めてほかの農家との差別化を図っています。

そうなると、乾燥や籾摺りなどの調整作業も独自に行う必要があり、ミニライスセンターの需要も高まっています。

これらのミニライスセンターで籾摺りを行うには、ミニライスセンターを持つ組織に所属したり、作業を委託したりする必要があります。自ら同志を募って共同でミニライスセンターを持つのもよい方法です。

▼営農組合でミニライスセンターを新設した事例

静岡製機株式会社 営業部 YouTube公式チャンネル「静岡製機ミニライスセンター 新潟県|大型乾燥機|営農組合|新設」

自社・自分による籾摺りで納得のいく品質に仕上げる

籾摺り機 米選機

籾摺り機(左側)・選別計量機(右側)
東北の山親父 / PIXTA(ピクスタ)

大規模栽培で、ある程度まとまった量の収穫がある場合は、独自に籾摺り機を購入する方法があります。

収穫と乾燥を速やかに行うために、コンバインと乾燥機をセットで購入しているケースは多くありますが、籾摺り機や米選機(選別計量機)を併せて購入すれば、カントリーエレベーターなどへの持ち込み時期を気にせずに調整まで行えます。

機械の購入にはコストがかかりますが、自分で納得のいくように調整して玄米に付加価値を付けたり、ほかの農家と時期をずらして販売したりできるため、収益の向上をめざせます。

▼米選機(選別計量機)については、こちらの記事をご覧ください。

籾摺り機の種類

自ら籾摺り機の購入を検討する場合は、どのような種類の機械があるのかを知っておくとよいでしょう。以下では、代表的な籾摺り機の種類を紹介します。

ゴムロール式

回転数の異なる2つのロールの隙間に籾を落とし、圧力と回転速度の違いによる摩擦で脱ぷするタイプです。最も一般的な方法で、機械によって異なりますが、おおむね80~85%の脱ぷ率です。

現在、普及しているのは、ゴムロールで脱ぷした後、籾を揺動選別式やロータリー式で選別するタイプが主流です。
ロールの隙間を調整することで脱ぷの強さを簡単に変えられる点や、ロールの摩耗状態を目視で確認でき、交換もしやすいので、手入れしやすくメンテナンス性が高い点で優れています。

一方、ゴムロール式では肌ずれが起きやすいので、自分で調整する際に、間隔を狭くしすぎて玄米を傷付けてしまわないよう注意が必要です。肌ずれを防ぐためには、籾の水分が15%以下になるまでしっかり乾燥させることが重要です。

また、ロールの隙間を狭くしすぎないよう、0.5~1.2mmに調整します。二度摺りも肌ずれの原因になるので、玄米が帰り籾に混入しないよう、籾仕切り版を調整します。

出典:大阪府立環境農林水産総合研究所「農林分野データベース|水稲栽培技術情報|手引き|基本技術編|収穫期 その1」

そのほか、籾の投入のしすぎや間欠投入、異物混入などはロールを傷め故障の原因となるので、籾の投入は慎重に行いましょう。

脱ぷ率が下がってきたら、ロール表面が摩耗していないか、軸がぶれていないかを確認します。軽度であればロール表面を旋盤で削りなおしたり、付け直してしっかり固定したりしてください。摩耗がひどい場合はロールを交換します。


▼ゴムロール式の製品例

株式会社サタケ YouTube公式チャンネル「【ch-03:ロールすきま自動制御】ネオライスマスター」

衝撃式

高速で回転するファンの遠心力で籾を飛ばし、外周のゴムに当たる摩擦力で脱ぷさせるタイプです。「インペラ式」と「ジェット式」の2種類があり、どちらも基本的なしくみは同じです。

ロール式と比較して、圧力をかけてつぶさないため玄米の肌ずれが少なく、玄米の光沢にも優れます。また、16%以上の高い水分を含む籾でも脱ぷ率が落ちず、肌ずれももほとんど発生しません。傷が少ないので貯蔵性も向上します。

さらに摩擦音が少ない分、静穏性に優れるのも大きな特長で、騒音によるトラブルを回避できます。ただし、ゴムの部分は摩耗するので、定期的な交換が必要です。


▼ジェット式籾摺り機の製品例

大島農機株式会社 YouTube公式チャンネル「MR505J 製品紹介」

籾摺り機の選び方

籾摺り・米選作業

東北の山親父 / PIXTA(ピクスタ)

最後に、籾摺り機を導入する際に注意すべき3つのポイントについて解説します。

1.肌ずれが防げるか

籾摺りにおいて最も注意すべき点は、肌ずれの発生防止です。肌ずれによって玄米に傷が付くことで、品質が低下し貯蔵性も劣ります。

ロール式の場合は特に肌ずれが発生しやすいので、「ロールの隙間を調整しやすい」「選別板によって適切に誘導選別し二度摺りを防止できる」など、傷ができないような対策が取れる製品を選んでください。

一般的に、衝撃式の籾摺り機のほうが、肌ずれの発生を抑えられます。価格やメンテナンス性などとの兼ね合いを考慮しつつ、衝撃式を選択するのもよいでしょう。

2.異物を自動で除去できるか

籾摺りの前には、乾燥後の数日間、籾を放置しておくため、小石やネズミの糞、虫などの異物が混入する場合があります。異物混入は籾摺り機の損傷や故障につながるうえ、ブランドの信頼を大きく損なうため、籾摺り作業の前に確実に取り除くことが重要です。

籾摺り機の中には、籾の投入時に含まれている異物を検知し、除去・自動排出できる機能を備えたものもあるため、そうしたタイプもおすすめです。

また、籾摺り作業中に玄米に籾が混入するのを防ぐ機能も重要です。籾の混入は0.3%以下でないと規格を満たせません。籾の混入を防ぐ玄米仕切り版の機能も確認してください。

3.残留米が少ないか

籾摺り作業が終わったときに籾摺り機内部の残留米が少ないことも、作業をスムーズに進めるうえで重要なポイントです。残留米が多いと、異なる品種の籾を投入する場合に取り除かなければならず、作業の妨げになります。

特に多品種の米を扱う場合は、効率よく品種を切り替えられることは重要です。エアブローなどを備えて残留米を簡単に排出できる機能が付いたものや、残留米を回収しやすい設計になっているものを選ぶとよいでしょう。

籾摺り後に、米選機を通し、袋詰めされる玄米

籾摺り後に、米選機を通し、袋詰めされる玄米
ururu / PIXTA(ピクスタ)

従来、水稲の籾摺りはカントリーエレベーターやライスセンターに持ち込み、乾燥や袋詰めまでの工程も含め委託することが一般的でした。

しかし、米の流通がほぼ自由化して以降、独自に籾摺り機や選別機を導入し、付加価値の高い米を販売する農事組合法人や任意組合、大規模経営農家が増えています。

自分で籾摺りを行うことは、納得のいくように調整できる利点もありますが、その分、玄米の品質に責任を負うことにもなります。籾摺り機を選ぶ際は、仕上がりの精度だけでなく作業効率やコストも考慮して、最適なものを検討しましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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