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根こぶ病から作物を守る! 防除策や効果的な農薬の使用方法を解説

根こぶ病から作物を守る! 防除策や効果的な農薬の使用方法を解説
出典 : 884 / PIXTA(ピクスタ) dorry / PIXTA(ピクスタ) トマト大好き / PIXTA(ピクスタ)

根こぶ病の病原菌は、キャベツや白菜などアブラナ科の野菜類に寄生し、発症すると土壌の水分や養分を吸収する根の働きを阻害します。病原菌は土壌内に長年にわたって潜伏するため、根こぶ病の発生防止に向けた適切な防除策の実践が重要です。この記事では、根こぶ病の特徴や発生原因、農薬の使用方法を含めた防除策について解説します。

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根こぶ病の病原菌は土壌から根に感染するだけでなく、根の中でも非常に多くの休眠胞子が増殖します。風や水を通じて他のほ場にも休眠胞子が拡散するため被害が拡大しやすく、作物の品質や収量に深刻な影響が及びかねません。

まずは、根こぶ病の症状から詳しく確認してみましょう。

根こぶ病とは

根こぶ病発病株 白菜・ブロッコリー・キャベツ

根こぶ病発病株 白菜・ブロッコリー・キャベツ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

根こぶ病は、キャベツや白菜をはじめ、カブ・ブロッコリー・大根など野菜を中心とするアブラナ科の植物の生長を妨げる病害です。

病原菌が根に感染し、細胞が異常に増殖することで大小さまざまなこぶを作り出します。こぶの影響で根が変形し、水分や養分の吸収が妨げられた結果、収量の低下や植物の枯死に至るケースが少なくありません。

また、こぶ1g中に約1億個の休眠胞子が含まれるといわれるほど強い増殖力を持っています。

ナス科(ナス・トマト・ピーマンなど)やウリ科(きゅうり・メロン・スイカなど)などの作物でも、根全体に多数のコブが発生する場合があります。しかし、アブラナ科の野菜とは異なり「ネコブセンチュウ」「ネグサレセンチュウ」という寄生虫が発生原因です。

根こぶ病対策と同様に、後述する土壌の酸度矯正や太陽熱消毒が有効といわれています。ただし、根こぶ病の防除で使用する農薬とネコブセンチュウを駆除する農薬の種類は異なるので注意が必要です。

きゅうり ネコブセンチュウ 被害根

きゅうり ネコブセンチュウ 被害根
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

根こぶ病の特徴・発生原因

根こぶ病の病原菌は、増殖力が強いだけでなく、土壌内での生存力も強いのが特徴です。水分が多い土壌や酸性の土壌を好む特性もあります。

アブラナ科の植物の根が近づくと休眠胞子が活性化、根毛や根の主根・支根(側根)にこぶを形成して植物の生長を阻害するのです。根こぶ病の特徴や発生原因についても説明します。

根こぶ病の特徴

キャベツ 根こぶ病発病株 多数の根こぶが形成されている

キャベツ 根こぶ病発病株 多数の根こぶが形成されている
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

根こぶ病は、カビの一種である「Plasmodiophora brassicae(プラズモディオフォラ・ブラシカエ)」という糸状菌によって引き起こされます。「ネコブカビ」と呼ばれることもありますが、生きている細胞に寄生する性質を持っているため作物には感染しません。

しかし、発芽初期に感染した場合は主根に大きなこぶが形成され、根が変形します。

生育途中に感染した場合は側根に小さなこぶが多数形成されます。こぶによって根の維管束が圧迫された結果、土壌から水分・養分を十分に吸収できず、日中に葉や茎がしおれる症状が出るのです。

白菜 根こぶ病発病株 地上部は萎れる

白菜 根こぶ病発病株 地上部は萎れる
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

朝夕にしおれが回復したとしても、生育の遅れにより収量が少なくなったり食味が落ちたりします。ただし、生育後期に感染した場合だとこぶが形成される量が少なく、市場出荷に支障のない品質で収穫できる場合もあります。

こぶの色は白色ですが、収穫期が近づくにつれて褐色に変色します。気温・地温が高いとこぶが腐敗しやすくなり、ほ場の広い範囲で悪臭が漂うのが特徴です。

また、一度根こぶ病が発病したほ場には長期にわたり病原菌が残り、適切な防除を行わないと翌年以降も感染被害が続きます。

ブロッコリー 根こぶ病発病株 こぶの断面は白い

ブロッコリー 根こぶ病発病株 こぶの断面は白い
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

根こぶ病の発生原因(発生のしかた)

根こぶ病は、土壌内の休眠胞子から放出された遊走子が根毛に寄生して発生します。休眠胞子の生存力は強く、7~10年以上にわたって土壌内に留まり続けます。最長で20年潜伏していた事例もあるようです。

アブラナ科の作物を定植後、根の生長が引き金となって休眠胞子が活性化し、遊走子を放出します。

遊走子は土壌の水分とともに根に到達し、根の中でも休眠胞子を形成します。その過程で根の細胞が異常に増殖して根こぶ病が発病し、大小さまざまなこぶができるのです。

腐敗やすき込み作業などによってこぶが破れると休眠胞子が土壌内に放出され、ほ場全体の土壌汚染につながります。

休眠胞子を含む土壌が風で飛散して、別のほ場でも根こぶ病が発生するケースも少なくありません。種子や農機具・靴底に汚染された土壌が付着して、汚染が拡大することも考えられます。

農機具に付着した根こぶ病に汚染された土壌が感染源になることもある

sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)

休眠胞子は、次回アブラナ科の作物が定植されるまで土壌に留まり続けます。つまり、ほ場としての防除を行わないと根こぶ病が発生し続けるのです。

根こぶ病が発病する温度は9℃~30℃、特に20℃~24℃の時期に発病しやすいとされています。

ほ場の水はけが悪い場合や土壌の水分が多い場合は、遊走子が土壌内を移動しやすくなるため発病数も増える傾向です。pH6.5以下の酸性寄りの土壌で根こぶ病が多発する傾向もみられます。

また、春から初秋にかけての発病が多い一方で、昼間の長さが11時間半以下になると発病数は少なくなります。

根こぶ病防除のポイント

根こぶ病の防除では、作付け前に土壌診断などで発病ポテンシャルを調査し、土壌改善などの耕種的防除と農薬による防除を組み合わせるのが効果的です。根こぶ病防除のポイントを解説します。

発病しやすさ(発病ポテンシャル)を知る

根こぶ病は、一度発生すると防除が困難で長期にわたり作物の収量が低下する可能性があり、農業経営に大きな影響を及ぼします。そのため、作付け前に防除手段を講じることが重要です。

根こぶ病の発病度合いは栽培した作物や土壌条件などに影響されるため、発病しやすさ(発病ポテンシャル)を調査してほ場に適した防除方法を検討します。

発病ポテンシャルの調査では、検査対象のほ場から採取した土壌に根こぶ病の病原菌を接種した後、作付け予定の作物を試験的に鉢植えする「DRC診断」という方法が用いられています。以下の基準で鉢ごとの根こぶの発生状況を調査し、発病度の算出が可能です。

DRC診断における根こぶ病の発病程度分類

DRC診断における根こぶ病の発病程度分類

また、鉢ごとに以下の計算式で発病度を算出し、平均値を求めます。

発病度=【(各発病程度×各個体数)÷(3×全個体数)】×100

DRC診断における発病度と対策

DRC診断における発病度と対策

出典:鹿児島県「お役立ちマニュアル等」所収「キャベツ根こぶ病の発病レベルに応じた総合防除対策マニュアル」

土壌の酸度矯正

pHスケール

Baldezh / PIXTA(ピクスタ)

根こぶ病はpH4.6~6.5の酸性土壌で発生しやすく、特にpH5.0前後が発病に最適な酸性度といわれています。一方、土壌液性がpH7.0以上であれば、根こぶ病がほとんど発生しません。そのため、pH7.0を目標に土壌のpH調整を実施します。

土壌の酸性度を矯正するには、炭酸カルシウムやケイ鉄・消石灰を施用するのが一般的です。ケイ鉄は炭酸カルシウムや消石灰と比べてコストが高いですが、一度施用すると矯正効果が10年程度継続するといわれています。

石灰質の資材を施用する場合は分施するようにします。土壌のリン酸が過剰だと根こぶ病の発病可能性が高くなるため、施肥量の調整もあわせて検討するようにしましょう。

おとり作物の栽培

エン麦は根こぶ病のおとり作物の1つ

岬太一 / PIXTA(ピクスタ)

根こぶ病に感染しても発病しない「おとり作物」を輪作することで休眠胞子の活性化を促し、土壌内の病原菌密度を減らすことが可能です。葉ダイコンやエン麦・ほうれん草の作付けが有効で、おとり作物専用の品種も開発されています。

例えば「おとり大根 CR-1」は、春が終わる頃に播種し表土から地下15cm前後に根を張らせることで、病原菌を90%以上減少させる実績を持っています。

1ヶ月程度栽培した後に土壌にすき込み、CR-1を腐敗させて病原菌の増殖を防ぐためにさらに1ヶ月ほど放置します。オラクル殺菌剤(後述)以外の根こぶ用殺菌剤を併用すると、CR-1の効果がゼロになるので要注意です。

太陽熱消毒

太陽光で土壌の温度を上げて、病原菌を殺菌する方法です。雑草の種子や、センチュウ類をはじめとする害虫の卵・幼虫・さなぎを殺す効果も期待できます。梅雨明けから8月下旬までの気温が高い時期に実施します。

灌水して土壌を十分に湿らせた後に、土表面との間にすき間ができないよう透明マルチまたはビニールで覆います。消毒期間が長いほど効果が大きくなるため、20~30日程度の期間をとるようにします。

太陽熱消毒後すぐに播種・定植できるよう施肥や畝立てなどを済ませておくと効率的です。消毒後に耕起すると、土壌深くの病原菌が地表に近づき、消毒効果が薄れる点にも留意しておきましょう。

農薬の使用

ブロッコリーのセルトレイ育苗

cozy / PIXTA(ピクスタ)

前述のDRC診断によって根こぶ病の発病度が高いと判断したほ場に対しては、農薬を使用した防除を実施します。「ネビジンSC」など休眠胞子の発芽を抑制するタイプの農薬もありますが、土壌内の病原菌の密度は減らない点に注意が必要です。

「オラクル顆粒水和剤」は、休眠胞子から放出された遊走子に直接作用するため、作物への感染を防ぐだけでなく土壌内の病原菌の密度も下げます。おとり植物の栽培と組み合わせると、さらに効果的です。

発病度の少ないほ場の場合は、セルトレイでの育苗段階で施用します。オラクル顆粒水和剤を200倍~500倍に希釈し、定植の前日あるいは直前に灌注します。

発病度が通常レベルのほ場では、ほ場の土壌にオラクル顆粒水和剤を均一に散布した後、深さ10~15cm程度まで混和すると効果的です。

土壌の水分が多すぎると十分に混和できないため、土を握ってすぐ崩れる程度の状態で施用します。また、発病度が高いほ場の場合は、土壌混和と育苗段階での灌注を組み合わせると根こぶ病の予防効果が高くなるでしょう。

※農薬によって適用のある作物や使用方法が異なります。農薬を使用する前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。

ブロッコリーのセルトレイ苗の移植

Ystudio / PIXTA(ピクスタ)

根こぶ病の病原菌はキャベツ・白菜などのアブラナ科の野菜類の根にコブを形成して作物の生長を阻害します。土壌内で7~10年以上にわたって休眠胞子の形で潜伏するなど、感染による営農への被害が大きくなりがちです。

作付け前に土壌の発病ポテンシャルを評価した上で、土壌のpH値矯正や土壌の太陽熱消毒、あるいはオラクル顆粒水和剤などの農薬を施用するなど総合的な防除に取り組みましょう。

おとり作物の栽培も、土壌内の休眠胞子を減らすためには効果的です。

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舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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