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小麦の生産量&消費量は? 日本の現状と農家のこれから

小麦の生産量&消費量は? 日本の現状と農家のこれから
出典 : mits / PIXTA(ピクスタ)

日本の小麦生産量の推移や消費量、世界・国別の小麦生産量を踏まえた国産小麦の需給動向を解説。併せて、小麦栽培に取り組むメリットや課題、課題解決に成功した農家の事例を紹介します。

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国産小麦の需要の高まりに応えようとする動きが活発化しています。一方で、気象変動による品質・収量確保が課題になっています。本記事では、小麦の生産量や消費量、小麦栽培に取り組むメリットや課題、栽培管理システムを活用した赤さび病の防除事例などを解説します。

日本の小麦収穫量の推移 【2024年最新】

農林水産省の作物統計調査によると、令和5年(2023年)の全国の小麦収穫量は1,094,000tで、前年産に比べて100,500t(約10%)増加しました。

都道府県ごとで見ると、全国の収穫量の6割以上を占める北海道が717,100tで、次いで福岡県が70,000t、佐賀県が50,900tと続きます。

小麦は気候の影響などを受けやすいため、年によって増減はするものの、過去10年間において国産小麦の収穫量は増加傾向です。

小麦の収穫量・作付面積の推移

出典:農林水産省「作物統計 作況調査(水陸稲、麦類、豆類、かんしょ、飼料作物、工芸農作物)|「麦類(子実用)の作付面積及び収穫量(令和2年(2020年)、令和3年(2021年)、令和4年(2022年)、令和5年(2023年)、長期累年)」よりminorasu編集部作成

【参考】世界の小麦生産量と日本への影響

総務省統計局が発表した「世界の統計2024」によると、令和3年(2021年)時点で世界の総生産量は770,877,000tです。

国別で見ると、生産量1位は136,946,000tを誇る中国で、次いでインドが109,590,000t、ロシアが76,057,000tとなります。

なお、2024年6月に米国農務省が発表した「米国農務省穀物等需給報告」によると、令和6〜7年度(2024〜2025年度)の世界の小麦の予測生産量は790,750,000tであり、対前年度比0.4%増で史上最高を記録する見通しです。

国内の消費量は? 国産小麦の需給動向

北海道での秋播き小麦の収穫作業の風景

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

日本の人口は減少傾向にありますが、令和6年(2024年)3月に農林水産省が発表した「麦の需給に関する見通し」によると、食糧用小麦の1人当たりの年間消費量は、昭和49年(1974年)以降おおむね31~33kgで安定的に推移しています。

一方、国内産食糧用小麦の生産量はまだまだ不足しており、需要量の8割強を輸入に頼っているのが現状です。

そのような状況の中で、外国産小麦の価格上昇、消費者の健康志向および食の安全への意識の高まり、国産小麦の品質向上などを受け、国産小麦の需要の高まりに応えようとする動きが国内で活発化しています。

食品産業でも大手企業を中心に、国産小麦の積極的な活用推進や外国産小麦からの切り替えが進んでいることから、国産小麦の需要はさらに高まっていくと考えられます。

▼国産小麦の需要拡大については、以下の記事でも解説していますので参考にしてください。

小麦栽培に取り組むメリットと課題

麦の収穫イメージ

adigosts / PIXTA(ピクスタ)

国産小麦の需要を捉えて小麦への転作を検討する方もいると思います。小麦栽培に取り組むメリットとして、以下の2点が挙げられます。

  1. 労働時間の削減
  2. 補助金・助成金の充実

一方、品質向上や安定供給といった課題もあります。小麦の作付けを検討するに当たっては、これらを踏まえて判断することが大切です。

メリット1:労働時間の削減

令和4年(2022年)産の10a当たりの水稲の労働時間は12.8時間である一方、小麦は3.6時間という結果が発表されています。このことから、小麦の面積当たりの労働時間は水稲と比較すると大幅に少ないことがメリットの1つとして挙げられます。

メリット2:補助金・助成金の充実

小麦栽培では、国が推奨する転作作物として、補助金や助成金が充実している点もメリットです。

小麦への転作は国が推奨しているため、経営面では「畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)」が受けられるほか、水稲からの転作であれば「水田活用の直接支払交付金」の対象になります。

特に注目すべきは、生産量と品質に応じて交付額が変動する「畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)」です。この交付金は、小麦の生産を奨励し、農家の収入安定に貢献することを目的としています。

例えば、令和5年(2023年)産から令和7年(2025年)産は、課税事業者で60kg当たり3,690円〜7,860円、非課税事業者で60kg当たり4,100円〜8,270円の交付金が受け取れます。

品種や品質によって単価が異なり、高品質な小麦を生産することで、より多くの交付金を受け取ることが可能です。

また、水田を活用した小麦生産を支援する「水田活用の直接支払交付金」は、水田の有効活用と食料自給率向上を目的としています。

令和6年(2024年)度は、10a当たり35,000円の戦略作物助成に加え、畑地化を促進するための10a当たり140,000円の交付金が用意されています。

▼「畑作物の直接支払交付金」や「水田活用の直接支払交付金」については、以下の記事でも解説しています。

課題:品質の向上と安定供給が難しい

小麦栽培は、収益性向上などのメリットがある一方、品質向上と安定供給が課題です。小麦は気候や湿害の影響を受けやすく、品質と収量が不安定になりがちです。

特に湿害は生育不良や未熟穂を引き起こし、収量と品質を大きく低下させます。そのため、ほ場の条件に応じた弾丸暗渠や心土破砕などの排水対策が求められます。

また、国産小麦は年や地域によるタンパク質含有量が変動しやすく、品質が安定しにくいといわれます。タンパク質含有量には施肥管理が影響するため、特に追肥の時期や量の判断が重要です。

さらに、近年は異常気象で多発している病害も課題です。例えば、北海道で発生している赤さび病は、収量を大幅に減少させるため適切な対策が必要です。

小麦の栽培に取り組む際には、排水対策の徹底や栽培管理の工夫など、高品質な小麦を安定供給するための対策が求められます。

小麦栽培の成功へ向けて! 北海道での取り組み事例

小麦の国内栽培では「赤かび病」や「赤さび病」の防除が重要です。日本一の小麦産地である北海道では、栽培管理システムの導入によって「赤さび病」の被害を最小限に抑え、品質・収量を向上させた事例があります。

深刻な赤さび病の被害

北海道で広大なほ場を営む株式会社クロップフィールドの川田透さんは、近年深刻化する赤さび病に頭を悩ませていました。温暖化などの影響で北海道でも発生頻度が増加しており、従来の防除方法では効果が薄れていました。

防除のために毎日すべてのほ場を見回っていましたが、肉体的にも時間的にも大きな負担を感じていました。

対策として栽培管理システムを導入

そんな中、川田さんは栽培管理システム「xarvio®(ザルビオ)フィールドマネージャー」を知り導入を決めます。最初は地力マップや生育マップを見て施肥判断に活用していましたが、病害リスクと防除タイミングがわかる「病害防除アラート」機能を知り、防除でも使い始めました。

ザルビオの病害防除アラートを活用した防除対策とは

川田さんは、病害発生のリスクをランプの色とアラートで確認していました。ある日、病害の発生リスクが上がっていたのでほ場の見回りに行くと、本当に赤さび病が発生していました。

メーカーの担当者に相談し、ストロビーフロアブルなどの適切な農薬を散布した結果、赤さび病を大幅に抑制することに成功。近隣ほ場の約2倍の収量を確保できました。

▼赤さび病防除の事例については、以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。

日本の小麦生産量は気候変動や輸入依存などの課題を抱えつつも、国内での需要が高まり、品質向上と安定供給が求められています。

小麦栽培は、労働時間の削減や補助金・助成金の充実といったメリットがある一方で、気候や病害の影響を受けやすいという課題もあります。

特に、近年の異常気象による病害対策は重要なポイントの1つです。そこで、病害防除に効果的な栽培管理システムの活用が推奨されます。

小麦栽培に参入する際は、これらの情報を参考に、栽培管理システムの導入も視野に入れてみてください。

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