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水稲における播種量の目安は? 播種の準備と育苗のポイント

水稲における播種量の目安は? 播種の準備と育苗のポイント
出典 : トゥラミーン/PIXTA(ピクスタ)

水稲農家にとって、冬は次作の栽培計画を立て、それに沿って準備を始める大切な時期です。作付面積や栽培方法が決まったら適切な播種量を割り出し、準備を整えましょう。播種量は品種や栽培方法、田植え機の機種などによって異なるので、事前に十分な検討が必要です。

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水稲栽培では、播種量が多いほど収量が増えるわけではなく、適切な播種量を守ることが多収に繋がります。そこで、本記事では基本的な播種量の目安に加え、昨今の物価・燃料高騰への対策として、コスト削減できる省力型の育苗方法における播種量についても紹介します。

水稲における播種量の目安

水稲 種籾

yayoi / PIXTA(ピクスタ)

水稲栽培ではさまざまな栽培・育苗方法やそれに対応する田植え機が開発されており、それぞれ適切な播種量も異なります。まず、ほ場の環境や気候、栽培品種などを考慮して最適な栽培方法を決め、それに適した播種量を把握しましょう。

ここでは、慣行栽培での一般的な播種量を中心に解説します。

慣行栽培で使用される苗には、主に稚苗と中苗があり、それぞれ苗箱1箱当たりの播種量や育苗期間が異なります。

以下の表は、栽培方法と苗の種類ごとに、播種量と10a当たりに必要な苗箱数の目安を一覧化したものです。

1箱当たり播種量1箱当たり播種量1箱当たり播種量1箱当たり播種量10a当たり箱数
乾籾乾籾湿籾(催芽籾)湿籾(催芽籾)
重量容量重量容量
慣行栽培
:稚苗
30~180g45〜270ml160~220g240〜330ml15~20箱
慣行栽培
:中苗
80~100g120〜150ml100~130g150〜195ml25~30箱
厚播き180~200g270〜300ml230~260g345〜390ml12~14箱
疎植栽培130~180g195〜270ml160~220g240〜330ml12~14箱
短期苗200~220g300〜330ml250~280g375〜420ml10~12箱

出典:以下資料よりminorasu編集部まとめ
福島県「こおりやまの米通信 」所収「平成30年版|Vol.1 播種準備編(播種の準備~育苗)」
埼玉県「 種もみの準備と播種」
大阪府立環境農林水産総合研究所「育苗期 その1」
千葉県「生育情報」所収「水稲(3)苗箱数を削減するための厚播き及び疎植栽培技術ー収量と玄米品質を低下させないポイントー」
株式会社クボタ「【クボタ ソリューションレポート No.6】「密播苗移植」と「ツインこまき」による省力・低コスト稲作を実証」

稚苗は育苗日数が15〜20日ほどの苗です。育苗期間が短く、面積当たりの箱数が少なくて済む一方、植え付けに適した時期が短いという欠点があります。

中苗は育苗日数が25〜30日ほどで、稚苗と成苗の中間くらいまで生育した苗です。稚苗よりも育苗期間は長くなりますが、苗の丈が大きいため水害時に冠水しにくく、出穂が早いことから収穫を早められるという特徴があります。

また、面積当たりの播種量を多くして密に種を播く厚播きや、株間を広げて栽植密度を下げる疎植など、苗箱数を削減するためにさまざまな栽培技術が導入されています。

このほか、省力化を目的として1箱当たりの播種量を2倍程度に増やし、通常よりも短い2週間程度の育苗期間で移植する短期苗という技術も開発されています。

これらの技術は慣行栽培で使用している資材や農機をそのまま利用することができ、特別な技術が必要ないため、経営規模や栽培経験に関わらず導入しやすいのが特徴です。

育苗のポイント

健康な苗を作るためには播種前の準備も重要です。この章では、育苗の基本的な流れと各工程におけるポイントを再確認しましょう。

▼詳しい育苗方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

種籾準備のポイント

種籾は、一般的に次の4工程に沿って準備します。

1.塩水選

良質な種籾を選ぶために行う選別作業が「塩水選(えんすいせん)」です。脱芒機などで種籾の芒(のぎ)を取り除いたあと、食塩や硫安を加えて一定の濃度に調節した比重液に種籾を投入し、浮いた種籾をすくい取ります。

浮いてくる種籾は病気に感染していたり、発芽と初期生育に必要な栄養分である胚乳が少なかったりするリスクがあります。ここで胚乳の詰まった良質な種籾だけを選別することにより、発芽効率がよくなり、植え付け初期の生育もよくなるというわけです。

選別が終わったら残った種籾を水洗いします。なお、消毒済みの種籾を購入した場合には、表面の農薬を洗い流してしまうことを防ぐため、塩水選の作業は必要ありません。

▼塩水選については、こちらの記事で詳しく解説しています。

2.種子消毒

次に、種籾から伝搬する病害虫を予防するため、「種子消毒」を行います。消毒方法には、農薬を使用する方法と、温湯を使う方法の2種類があります。

農薬による消毒では、使用する製品に定められた方法に従い、浸漬処理や粉衣処理、吹付処理などの方法で消毒します。温湯消毒では、種籾を網袋に入れ、60℃程度のお湯に10〜15分浸します。

▼種子消毒については、こちらの記事で詳しく解説しています。

3.浸種

「浸種(しんしゅ)」とは、種籾を水に浸し、発芽に必要な水分を吸収させるための工程のことです。水温が高いと浸種時間が少なくて済む反面、急激に吸水させることで発芽ムラが起こりやすくなります。

そこで水温は10~15℃程度の低温に保ちながら、7~10日ほどかけてじっくりと水を吸わせます。積算温度(1日の平均水温×日数)は100℃程度が目安です。

なお、初めの3日間は消毒効果を高めるために水は換えず、その後は種籾の酸欠を防ぐため2〜3日おきに水を交換します。最終的な含水率は20~25%程度が目安です。

4.催芽

「催芽(さいが)」は発芽する時期をそろえるために必要な工程です。温度を28~32℃に保ち、15〜20時間ほど加温して一斉に発芽させます。

品種や温度環境などによって催芽状況は異なりますが、90%以上の種籾が鳩胸状態(芽の長さが0.5〜1mm程度)になったら、予熱で芽が伸びすぎないよう10℃以下の冷水で浸して芽止めをします。

一旦催芽が始まると一気に伸びてしまうので、籾が透き通ってきたタイミングを見逃さないよう注意してください。

種籾の催芽

大地爽風/PIXTA(ピクスタ)

苗箱の床土準備

育苗方法に適した苗箱と床土を準備します。育苗に適した土の条件は、排水性、保水性、通気性に優れていることです。pHは4.5~5.5を目安とします。

市販の苗箱は底にあらかじめ排水穴があいているため、土を入れた際に穴から土がこぼれないように新聞紙や遮根シートを敷いておきましょう。

底に敷いた新聞紙や遮根シートは、根が箱の外まで伸びて苗代田に根を張るのを防ぐとともに、苗同士の根がらみを防止し、田植えの際に掻き取りやすくするうえでも効果的です。

苗箱に土と肥料を入れたら、播種機を使って種籾を播き、十分に灌水します。殺菌剤は床土に混ぜるか播種後に施用しておきましょう。

播種のポイント・留意点

播種機による種播き

masy / PIXTA(ピクスタ)

播種のポイントは、播種機を使って均一に播くこと、十分に灌水すること、種籾が隠れる程度まで均一に覆土することの3つです。なお、播種量は前出の表を参考に、使用する苗や栽培方法などを考慮して適量を割り出しましょう。

この章では参考までに、厚播き、疎植栽培、短期苗の3つの方法における播種のポイントを簡単に解説します。

厚播き

厚播きは、1箱当たりの播種量を通常よりも増やし、播種密度を高める方法です。苗箱の数が削減できるため、育苗や移植の作業を省力化できます。

1箱当たりの播種量は、乾籾で180〜200g、催芽籾では230〜260g程度が目安です。通常型の田植え機で移植する場合、苗の掻き取り量を最小限に設定し、掻き取り精度を改善するためのアタッチメントを装着する必要があります。

厚播き苗は、慣行栽培の苗よりも細く軟弱となる傾向があるため、移植に当たっては苗が折れたり、根元がバラバラになったりしないように慎重に行いましょう。

また、厚播き苗は黄化が早いので、播種後30日以内に移植が終わるように作業計画をしっかり立てて苗の老化を防ぐことが重要です。

疎植栽培

疎植栽培は、移植時に株間を広げて栽植密度を下げる栽培方法です。慣行栽培における株間が15〜18cmであるのに対し、疎植栽培では株間を約2倍となる26~30cmに広げます。

1箱当たりの播種量は通常と変わりませんが、株間を広く取ることで面積当たりの苗箱数を35〜40%程度削減できると同時に、移植にかかる労働時間も短縮できるというメリットがあります。

出典:広島県「技術資料」所収「疎植栽培マニュアル 改訂版平成18年3月(農業改良普及センター・広島県穀物改良協会)」
奈良県「栽培技術マニュアル」所収「水稲疎植栽培マニュアル」農業総合センター「水稲疎植栽培マニュアル(平坦ヒノヒカリ編)」

株間を十分に設けることで風通しと日当たりがよくなるため、茎数や1穂当たりの籾数が増加し、慣行栽培と比較しても収量はさほど変わりません。そのうえ、疎植栽培の苗は茎が太くなるため倒伏しにくくなり、紋枯病など病害虫の発生も減少する傾向にあります。

疎植栽培に適しているのは、分げつ期間を長く確保できるよう4月に移植可能な暖地で、かつ水持ちがよく地力の高いほ場です。なお、株間が広い分、日当たりがよく雑草も繁茂しやすいので、しっかりとした防除対策が欠かせません。

また、品種によっては穂数が減って収量が減少する可能性がある点に注意しましょう。

短期苗

短期苗を使用した栽培方法では、1箱当たりの播種量を慣行栽培の約2倍に増やすことで、育苗期間を短縮できるのが特徴です。慣行栽培の育苗期間が20〜25日程度であるのに対し、短期苗では14日程度の若い苗を使用します。

出典:農林水産省「担い手農家の経営革新に資する稲作技術カタログ」所収「~水稲の新たな育苗「短期苗」のすすめ~」

厚播きでは、通常型の播種機で対応できる播種量の上限は1箱当たり乾籾180〜200g程度 とされていますが、短期苗では1箱当たり催芽籾で250g程度まで対応できる場合が多いようです。

播種機の性能によっては最大播種量が250gに満たない場合もあるため、1回の播種量を125〜140gに設定して播種を2回繰り返す方法で対応します。

掻き取り量は1株当たり3~4本になるように調整してください。それ以上植え付けると株が過繁茂となり、病害が発生しやすくなるため注意が必要です。

育苗期のポイント

育苗期に注意すべきポイントについても説明しましょう。ここでは「出芽期」「緑化「硬化」の3工程における留意点を紹介します。

1.出芽期

出芽した水稲苗

otamoto17 / PIXTA(ピクスタ)

均一に出芽させるため、温度を30℃とし、温度ムラが出ないように管理します。出芽には、主に積み重ね出芽と露地出芽があります。

積み重ね出芽とは、15~20枚の苗箱を角材の上に積み重ね、保温マットとビニールで保温して出芽させる方法です。通常は2〜3日で出芽し、出芽後に苗代に移します。

気温が低い日が続く場合は積み重ねる箱数を減らす、苗箱の重ね順を入れ替えて温度ムラを防ぐことがポイントです。

露地出芽は、播種後すぐに苗代に移して出芽させる方法です。出芽は気温に左右されるため、保温マットなどで被覆し、高温時の苗焼けや病害発生、低温時の出芽不揃いなどに注意してください。

2.緑化

出芽後、苗箱をハウス内に移し、寒冷紗で遮光して日中の温度を20〜25℃に保ちます。夜間はハウス内温度が10℃以下にならないようさらにビニールで被覆して保温します。

発根を促すため、土の表面が乾いていれば灌水してください。苗の高さが3cm程度まで達し、第1葉が緑色になって緑化が完了したら被覆を取り外します。

緑化後の水稲苗

otamoto17 / PIXTA(ピクスタ)

3.硬化

緑化が完了した苗を自然条件下で鍛えることを硬化といいます。硬化期間は被覆を取り外してから20日ほどを目安とし、この期間は温度調節や換気、土の乾燥に注意して適切に管理します。日中は20℃前後、夜間は10~15℃が適温です。

水稲苗の硬化

otamoto17 / PIXTA(ピクスタ)

移植のポイント

硬化期が終わると、いよいよ移植です。稚苗の移植は本州では一般的に5〜6月が適期とされており、中苗はそれよりも遅く、その他の方法ではもっと早くなります。

また、苗を移植するまでの間には、水田を均平化する代掻きの作業を終えておく必要があります。代掻きの1〜2日前には水田に水を入れて基肥を施しておくのが一般的です。適期を過ぎてから移植すると初期生育が悪くなる傾向があるため注意してください。

水稲苗を本田に運搬する

kelly marken / PIXTA(ピクスタ)

▼「デジタルツールによる適期見極めで1等米を獲得した事例」についてはこちらをご覧ください

「密播疎植」や「高密度播種苗」でさらなる省力化も

水稲 播種密度

D-LIGHT / PIXTA(ピクスタ)

これまでに紹介した育苗・栽培方法以外にも、より高い省力化を可能にする方法が「密播疎植(みっぱそしょく)」や「高密度播種苗」です。

密播疎植とは「密播」と「疎植栽培」の技術を合わせたもので、1箱当たり220〜250g(乾籾)の厚播きで播種した苗を少量ずつ掻き取って移植する手法です。

疎植栽培では10a当たり50〜60株、箱数9〜12枚程度を使用するのに対し、密播疎植では37〜42株、箱数6〜8枚程度まで減らせるのがメリットです。

この方法は、農機メーカーの井関農機が提案しており、密播の苗を少量掻き取ることのできる対応農機も、井関農機をはじめとする各社から発売されています。

出典:日本曹達株式会社「NISSOの農業新時代/農薬時代」所収「水稲省力低コスト技術密播疎植栽培について」

高密度播種苗栽培は、1箱当たり250〜300gの高密度で厚播きする方法です。密播疎植と同様に苗を小さく掻き取って移植することで、10a当たりの箱数を減らすことができます。

青森県が公表した「水稲高密度播種苗栽培マニュアル」によれば、高密度播種苗による収量とコスト削減の効果を試算した結果、10a当たり70株で植えた場合に、利益および生産性で最も高い結果が得られたといいます。

出典:地方独立行政法人 青森県産業技術センター「青森県水稲高密度播種苗栽培マニュアル」所収「水稲高密度播種苗栽培マニュアルver.1(令和4年2月)」

密播疎植や高密度播種苗のメリット

密播疎植や高密度播種苗などの栽培技術には、面積当たりの必要苗箱を減らすことでコスト削減を実現するとともに、育苗および移植の作業にかかる時間と労力を省力化できるメリットがあります。

作付け規模が大きいほどコスト削減および省力化の効果も大きくなるため、大規模農家の効率経営で多大な成果を上げることが期待できます。

留意点

高密度で播種した苗は、慣行栽培の苗に比べて初期生育が悪くなりやすい点に注意が必要です。移植に当たっては、苗タンクに積載する際にマットが崩れることがあるため、作業は慎重に行いましょう。

また、慣行栽培に比べて苗が老化しやすい傾向にあるため、移植の予定日から逆算して播種日を決め、適期移植を心がけてください。

疎植栽培ではコスト削減が期待される反面、地温が低いと十分な茎数を確保できない可能性があり、収量が低下するリスクもあります。北海道などの寒冷地では、多収品種に切り替えて疎植栽培にチャレンジするなどの対策が必要です。

水稲 苗箱

kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)

近年の水稲栽培では、より少ない労力と費用で多くの収量が期待できる新しい育苗方法が導入されています。これらの栽培方法は、慣行栽培とは1箱当たりの播種量が異なります。

ほ場の環境や品種、所有する農機の性能などに応じて適した栽培方法を見極め、その方法で最も効率的に利益を上げる播種量を算出してください。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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