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【オモダカの除草対策】難防除雑草の見分け方と、効果的な除草方法

【オモダカの除草対策】難防除雑草の見分け方と、効果的な除草方法
出典 : cozy/ PIXTA(ピクスタ)

オモダカは発生期間が長いため、水稲栽培の全期間にわたって体系的に防除を行うことが重要です。本記事では、オモダカの生態や見分け方を画像付きで紹介するとともに、効果的な除草方法やSU抵抗性への対策について、有効な成分や除草剤にも触れながら解説します。

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オモダカは、水稲栽培で問題になる代表的な雑草の1つです。多発すると水稲の生育を抑制し、収量に影響するため、早期の除草対策が欠かせません。

近年では、SU抵抗性を持つオモダカの多発が問題視されており、防除に当たっては抵抗性を獲得させない防除体系の構築が必要です。

難防除雑草「オモダカ」の生態と主な特徴

オモダカ 大型の株

オモダカ 大型の株
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

オモダカは、全国の水田や湿地などに見られる多年草で、特に北海道や東北・北陸地方、関東以西の高地など、冷涼な地に多く発生します。

基本的には草丈60~80cmと大型で、特徴的な矢じり形の葉を茂らせます。夏になると葉の間に高さ20~80cmの茎を出し、そこに白い花を咲かせます。雄花と雌花があり、雌花は花が終わると丸い実を実らせます。

オモダカの花と丸い果実

オモダカの花と丸い果実
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

オモダカは種子からも発生しますが、除草剤を使っている水田では、地下茎の先端につく、食用のクワイに似た「塊茎」からの繁殖が問題になります。

塊茎は、開花期から伸び始める地下茎の先端につき、クワイと同じようにくちばし状の芽が長く伸びています。秋には塊根からさらに地下茎を伸ばし、その先に50~150個もの塊茎を作り範囲を広げます。


水田の土中に残った塊茎は、秋・冬には休眠し、翌年の春から初夏にかけて出芽していきますが、一斉に発生するわけではなく、代かきの後から出穂期まで、長く発生し続けることがあります。

大型雑草のオモダカは養分の収奪力が大きいので、多発すると水稲の生育を抑制し、収量の減少につながります。

それゆえ防除が非常に困難で、発生直後の早期防除が重要です。

オモダカと、コナギ・ホタルイの見分け方

オモダカとコナギが発生している水田

オモダカとコナギが発生している水田
春夏秋冬 / PIXTA(ピクスタ)

オモダカは生長すると独特な葉の形状で目立ちますが、そうなる前の早期防除が重要なため、発芽直後の幼植物の頃に見分ける必要があります。

同じ水田の雑草であるコナギ・イヌホタルイとは、生長した株こそそれぞれまったく異なりますが、発芽直後はいずれも細長い葉で姿かたちがよく似ています。

春先の水田に小さな雑草が芽生えたら、以下で説明する特徴とよく照らし合わせて種類を特定し、その雑草に適した除草剤を選びましょう。前年に発生した、周囲で多発しているなどの情報があれば、それらも踏まえて判断します。


発芽直後~5葉期くらいまでのオモダカ・コナギ・イヌホタルイの特徴は、以下の通りです。

<出芽直後のオモダカの特徴>
・塊茎から芽が出ていれば、オモダカと思ってよい
・種子から発芽するオモダカもあるので、その場合は葉の特徴を見る
・葉に厚みがあり、全体的に丸みを帯びている

<出芽直後のコナギ>
・種子から発芽しており、葉の先に種子殻が付いている
・葉は細く、先端が鋭く尖っている
・葉が四方に向かって展開している

<出芽直後のイヌホタルイ>
・種子から発芽しており、葉の先に種子殻が付いている
・葉は細く、先端が尖っている
・葉が一直線上に展開している

オモダカはこの時期を過ぎ、6~8葉になるとへら状の葉が出始め、その後、矢じり状の成葉が出て、ほかの雑草と区別しやすくなります。

オモダカ 生育期

オモダカ 生育期
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

コナギ 生育期

コナギ 生育期
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

イヌホタルイ 生育期~開花期

イヌホタルイ 生育期~開花期
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

なお、コナギとイヌホタルイ以外にも、同じオモダカ科のウリカワともよく似ています。ウリカワは、ピーラーで剥いたキュウリの皮に似ていることからその名が付いたといわれるように、やや幅のある線形で厚みのある葉が特徴です。

オモダカと同様に塊茎で増える雑草で、多発すると水稲の生育を抑制します。もっとも、通常の除草剤で防除でき、オモダカのように問題になるほど蔓延していません。

除草を困難にする、オモダカの「SU抵抗性」とは?

水田 オモダカ 大発生

春夏秋冬/ PIXTA(ピクスタ)

適正に除草剤を使用したにもかかわらず、ほ場にオモダカが多数残り、除草剤の影響を受けずに生長を続けている場合、あるいは数年の間にオモダカだけが多発するようになった場合、そのオモダカはSU抵抗性を獲得している恐れがあります。

SU抵抗性とは、一発処理除草剤などに多い、「スルホニルウレア(SU)系除草剤」に対する抵抗性のことです。

SU抵抗性を獲得した雑草は、SU成分を含む除草剤が効かなくなるため、除草剤を使ったあとにその種類の雑草だけが除草剤の影響を受けずに残り、ほかの雑草がなくなった水田に広範囲で繁茂します。

また、一度SU抵抗性を獲得すると次世代以降に遺伝し、翌年以降も同成分では防除できません。

SU抵抗性を獲得する雑草は、SU成分を含む除草剤を連用することで出現します。オモダカはSU抵抗性を獲得しやすい雑草の1つで、各地で抵抗性の獲得が広がっているため、まだ抵抗性が確認されていない地域でも発生予防対策が必要です。

▼SU抵抗性雑草について、詳しくはこちらの記事も参考にしてください。

【オモダカ対策】 効果的な除草方法と、使える除草剤の例

SU抵抗性の獲得を防ぐためには、SU成分を含む除草剤の連用を避け、SU成分を含まない除草剤とのローテーション体系を築くことが重要です。そこで以下では、効果的な防除体系を紹介します。

除草剤は「初中期一発剤+中期剤」などの体系防除が効果的

塊茎から発芽することで長期にわたって発生し続けるオモダカなどの雑草は、従来、効果の持続性が高いSU成分を含む「一発処理除草剤」によって効率的に防除できていました。ところが、これを毎年連続して使うことで、抵抗性を獲得する草種が出現し始めました。

抵抗性を獲得したオモダカが発生すると、翌年以降も同様の抵抗性を持つオモダカが発生します。そのため、翌年に同じ除草剤を使っても効果がありません。

オモダカの効果的な除草体系は、「初期剤または初中期一発剤」+「中期剤または後期剤」です。

まず、代かき後約30日の発生初期に、「初期剤」または「初中期一発剤」を早期散布します。その後、様子を見ながら必要に応じて中期剤を散布します。中期剤の散布は、矢じり葉の3葉期までを目安に行いましょう。

移植後45~50日頃にまた様子を見て、まだオモダカが残っているようなら後期剤を散布します。中・後期剤を使用したあとも多くの生長したオモダカが残っている場合、SU抵抗性を獲得している可能性があるので、翌年はSU剤を含まない除草剤を使用しましょう。

稲刈り後、オモダカが塊茎形成をする頃に茎葉処理剤を使用すると、塊茎形成を阻害する効果が期待できます。いずれの場合も、SU系成分はもちろん、同じ有効成分のものを連続して使わないように、異なる成分の除草剤を用意してローテーションを組みましょう。

オモダカに効果のある成分と主な除草剤を以下にまとめます。なお、「*」の付いているものはSU系成分、またはそれを含む除草剤です。

※なお、下記の除草剤は2023年5月11日現在、オモダカまたは多年生広葉雑草に登録のあるものです。実際の使用に当たっては、使用時点での登録を確認し、ラベルをよく読んで用法・用量を守りましょう。

<初期>
成分:ベンゾフェナップ、ピラゾレート、ピラクロニル、プロピリスルフロン*
除草剤:ホクコーユニハーブフロアブル、イネキングジャンボ、ゼータワンフロアブル*

<中・後期>
成分:ハロスルフロンメチル*、MCPB、ベンタゾン
除草剤:ハイカット1キロ粒剤*、バサグラン粒剤(ナトリウム塩)

SU抵抗性を持つオモダカには、SU系以外の除草剤で対策を

これまでSU系除草剤を適切に使用したにもかかわらず生長したオモダカだけが残存するなど、SU抵抗性の獲得が疑われる場合は、前項で挙げた除草剤のうち、SU系の除草剤の使用をやめて、ほかの成分のものに切り替えましょう。

SU系成分を含んでいても、それ以外のオモダカに有効な成分が含まれている場合は、ローテーションの中に組み入れても構いません。

基本的な除草体系は、前項で紹介したように「初期剤または初中期一発剤」と、「中期剤または後期剤」を適宜組み合わせて行います。

特に、白化作用のあるベンゾフェナップはオモダカに高い効果を発揮するので、「ホクコーユニハーブフロアブル」などベンゾフェナップ系の除草剤を初期剤として、従来の一発処理剤などを組み合わせた体系処理を実施するとよいでしょう。

また、初めて発生を確認した年には、できる限りその年内の根絶をめざし、後期剤(茎葉処理剤)を使って防除を徹底しましょう。

秋耕や中干し、田畑輪換などの耕種的防除も有効

水田の中干し 溝切り

mebius / PIXTA(ピクスタ)

SU抵抗性のオモダカの発生を防ぐには、SU系とSU系以外の除草剤のローテーション体系で防除することと併せて、耕種的防除にも取り組むと効果的です。耕種的防除としては、以下のようなものが有効です。

・オモダカの好む湿田・浸水環境を作らないように、水田の十分な排水対策を整備する
・中干しや間断灌漑を行う
・秋耕を行って塊茎を掘り起こす

こうした耕種的防除はSU抵抗性を獲得したオモダカにも効果があり、適期・適切なローテーション体系による除草剤の使用と組み合わせることで、オモダカを根絶させることも可能です。


▼中干しや秋耕、田畑輪換については下記の記事をご覧ください。

オモダカは湿地などによく茂っているありふれた雑草ですが、水稲栽培では、多発すると水稲の生育を妨げ、収量を減少させることもあるやっかいな雑草です。

そのうえSU抵抗性を獲得しやすく、SU系成分を主とした一発剤を使い続けていると、いつの間にか田面全体で大発生することもあり、各地で問題となっています。

SU系の一発処理除草剤は効果が長く持続し、除草作業の省力化に役立ちますが、連続使用は避けることが大切です。SU系以外の農薬や耕種的防除も組み合わせた、バランスのよい雑草防除体系を構築しましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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